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東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol1.竹島の横断歩道の意味とはー

この記事は1年以上前に書かれた記事です。 営業時間など最新の情報はお店にお問い合わせください。 変更等お気づきの場合はメニューの情報提供カテゴリーからご連絡いただけると幸いです。

文化財や世界遺産、天然記念物に日本遺産、さらにはジオパークといった地域資源とその活用に関する遊びのような仕事に従事するようになって約20年。活動するなかで、世間には「見残された物」や「気づかれていない物」が多々あることに気づいてしまった。それらは決して価値や意味がない物ではなく、むしろ価値や意味に溢れた物であった。ただ、あまり主張することなく普通に存在していて、あまりにも「当たり前」であり過ぎるので、その価値や意味が世間とつながっていない場合もあるのである。

私は、こうした地域資源と向き合う活動のなかでそれらに気づき、さらに愛おしいという気持ちを持って接し、寄り添うようになった。そして、この素晴らしいものたちを総称する名がないかと考えた時にぱっと浮かんだのが「世間遺産」だった。世界遺産や各種文化財に認定や指定されずとも、どこか奥深くて、どこか懐かしくて、どこにあるのか分からない物たちに、自分なりの価値と意味を込めて勝手に認定しようという冒険的試みである。

すると、同じような活動を大分県で展開している人物が存在することを知った。写真家の藤田洋三氏である。間もなくまるでお互いの引力が働いたかのように、直接お会いする機会にも恵まれたのだが、初めて会った時の藤田氏の印象は、「本人がそのまま世間遺産」であった。彼は近年、世間遺産を詩的に表現した言葉を記している。「幸せな暮らしをしたいと考え、皆んなで力を合わせた構築物。何気なく生活にとけ込み、決して主張しない健気な風景。暮らしから産まれ、生活のなかで活かされてきたモノ。先人の暮らしぶりを伝える遺産。世界遺産も素晴らしい。世間遺産はもっと素晴らしい」と。

私にとっては鹿児島をフィールドにしたゆるい社会活動の一環であった「世間遺産」。この活動に初めて共鳴してくださった稀有な人物が、元南日本新聞社の能勢謙三氏であった。その能勢氏のお陰で、私が鹿児島で出会った世間遺産は平成18年6月から南日本新聞の夕刊で連載させていただけることになった。平成21年2月に夕刊が休刊(廃止)された後は、なんと朝刊に場を移して「続世間遺産」の名で平成25年5月まで連載させていただいた。

それから早いもので7年が経過しているわけだが、今でも私は世間遺産に出会い続けている。そして今回、鹿児島にこだわり、鹿児島を愛し、鹿児島を発信している中園氏の協力によって、再び世間遺産をご紹介できることになった。鹿児島で見残されてきたかもしれない世間遺産を通じて、鹿児島の魅力の幅広さとゆるさとカッコよさを伝えていけたらと目論んでいる。

枕が異常に長くなったが、こうした経緯を経た記念すべき新規一転第一回目は、「竹島の横断歩道」を紹介したい。三島村の玄関口ともいえる竹島は、現在人口は約70人。名前にあるようにリュウキュウチクこと大名竹に覆われた島であり、特産品も美味な大名竹である。その島の竹島小・中学校に通じる道上には、道幅に不釣り合い、それでもって少々斜めな横断歩道が舗装されている。

2009年9月東川隆太郎撮影

2009年9月東川隆太郎撮影

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol1.竹島の横断歩道の意味とはー

2012年9月東川隆太郎撮影

その描き方は通常の横断歩道のようにしっかりとペイントされた感じではなく、実に素朴さにあふれている。また、横断歩道は交通量の多さや危険度に応じて設置されるものだが、人口が約70人の竹島は、交通量もさほどなく、危険度も低いはず。竹島における横断歩道の在り方に若干の違和感を覚えため、私は率直に島民に「あれは何故?」と尋ねた。

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol1.竹島の横断歩道の意味とはー

2009年9月東川隆太郎撮影

するとこの横断歩道は、島の児童や学生が鹿児島市などに行った際に困らぬよう、横断歩道や交通法規に慣れてもらうために舗装したものであるとの返答を得た。つまり、島民たちの子どもたちに対するやさしさに溢れた心から生み出されたものであったのである。これまで私は三回竹島に上陸しているが、その度にこの優しい横断歩道に触れ、とりあえず渡っている。

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol1.竹島の横断歩道の意味とはー

2020年2月東川隆太郎撮影

令和2年2月に学校を訪問した際にも横断歩道をしっかりと渡って校門へと向かってみた。上陸する度に少しずつ横断歩道の塗装が薄くなってきているが、それも歴史であり、年輪のようなものだ。

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol1.竹島の横断歩道の意味とはー

2020年2月東川隆太郎撮影

竹島という離島ならではの事情と島民のやさしさ、さらには本来の横断歩道に役割とは若干違うゆるい存在が、私の心に響き世間遺産に認定した。

※参考文献「三島村誌」

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol1.竹島の横断歩道の意味とはー

2012年9月東川隆太郎撮影

 

この記事はかごしま探検の会の東川隆太郎さんに寄稿いただき、カゴシマニアックス編集部で編集したものです。

かごしま探検の会ホームページはこちら

https://tankennokai.com/

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東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol1.竹島の横断歩道の意味とはー

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