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東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol25.柏原の地蔵群(東串良町柏原)ー

東串良町にはふたつの商店街がある。
ひとつは柏原商店街。
もうひとつは豊栄商店街。

豊栄商店街は、江戸時代の串良郷の町人町が前身という歴史を持つ。
商店街の街路がまっすぐでなく、中央付近が枡形のように折れ曲っているのも特徴。
特色あるお店も点在していて、佇まいはもちろんメニューも昭和な食堂や、衣料店なのに駄菓子が充実し且つかき氷まで食べられる店舗など個性派ぞろい。
10年くらい前には、商店街に馬車を走らせる目的で馬も飼育していた。
現在馬はいないが、馬が飼われていた牧場だけは商店街の背後にある。

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実は歴史の古い豊栄商店街:東川隆太郎撮影

そんな豊栄商店街も気になるが、今回の話題は肝属川の河口域に位置する柏原商店街にある地蔵である。
全国あまねく安置されていて、いわれある場所での供養や道行く人々の安全祈願など、様々な目的でそこに佇む地蔵。
もちろん、鹿児島県内にも数多く点在するが、街なかに集中している地域はあまりない。
街なかならば「石敢当」と呼ばれる魔除けの石が置かれたり、田園地帯であれば「田の神石像」があったりと、地蔵以外の信仰対象があることも理由のひとつであろう。
加えて、明治2(1869)年の廃仏毀釈が南九州では徹底されたことも影響していると考えられる。

そのような鹿児島県において、太平洋岸は例外的に地蔵信仰が盛んで、志布志では現在も「角地蔵」といって辻々に地蔵が安置されているし、大崎町の七夕市では地蔵にお参りする習慣が現在でもある。

そしてここ柏原にも、塩入川下流の第一有明橋近くから熊野神社がある熊之馬場までの範囲におびただしい数の地蔵がいらっしゃるのだ。
令和3年9月に自分が歩いて数えた際には18体を確認した。

その形状や安置の場所は、柏原のなかでも様々である。
大きさが最大なのは、東串良町の文化財に指定されているもので、専念寺の境内にある。
舟形光背を含めると高さが146センチもあり、建立は元禄6(1693)年と古い。

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写真では伝わりにくいが実はでかい専念寺の地蔵:東川隆太郎撮影

その他は、平均の高さが約30センチから約40センチと小ぶりな地蔵がほとんど。
「地蔵尊」と字のみが刻まれているものや、廃仏毀釈の影響から頭部を中心に欠損しているものもある。

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頭部が欠損している栗町の地蔵:東川隆太郎撮影

また石材に注目すると、彫刻しやすい溶結凝灰岩が多いものの、なかには大隅半島南東部らしく花崗岩に刻まれたものもある。

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熊野神社の地蔵は凝灰岩に彫られている:東川隆太郎撮影

凝灰岩の種類も様々で、水天宮とともに並んで安置されている地蔵は、おそらく山川石(鹿児島県指宿市山川付近でのみ産出する石)製と考えられる。

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水天宮横にある山川石の地蔵:東川隆太郎撮影

柏原は港町ゆえに、地蔵も様々な場所で製作されて持ち込まれたのだろう。
地蔵としてカウントはしなかったが、六地蔵塔の一部が地蔵のように道沿いに安置されているものもあった。

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姿を変えて安置されている東仲町の六地蔵:東川隆太郎撮影

置かれ方も三叉路や曲がり角、直線の道沿いとそれぞれで、志布志の角地蔵のような決まったルールはなさそうである。

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角地蔵っぽく置かれている栗町の地蔵:東川隆太郎撮影
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行きかう車を見つめる国道沿いの地蔵:東川隆太郎撮影

またほとんどが一体ずつだが、三体並びのものもあった。

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各所から集められたと思われる三体並びの地蔵:東川隆太郎撮影

地蔵たちは一見バラバラのように見えながら、柏原地区全体に偏りなく安置され、地域を全体として見守っている印象があり、さらに重要なことに、そのほとんどに花が供えられ人々が今も大切にしていることが感じられた。
それは心が暖かくなる光景であった。

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花が手向けられている東仲町の地蔵:東川隆太郎撮影

特に江戸期には河口の港町としても栄えた柏原。
その繁栄を静かに見守って来た地蔵群は、鹿児島県では珍しい路傍の神々として大切にされていることに価値があると考え、世間遺産に認定した。

参考文献
東串良町郷土誌 昭和55年発行 編集者 東串良町郷土誌編纂委員会
東串良町の文化財 平成2年再発行 発行 東串良町教育委員会
鹿児島の民俗暦 1992年発行 文 小野重朗 写真 鶴添泰蔵 海鳥ブックス

この記事はかごしま探検の会の東川隆太郎さんに寄稿いただき、カゴシマニアックス編集部で編集したものです。

かごしま探検の会ホームページはこちら

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東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol25.柏原の地蔵群(東串良町柏原)ー

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