東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol4.厳島神社の鳥居の鍾乳管ー




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昨年2019年の12月、喜界島の荒木集落を妻とふたりでぶらぶらしていた。荒木集落は、喜界島では南東に位置し、奄美大島に沈む夕日を美しく望むことができる素敵な集落である。ただ、私たちがぶらぶらしたのは昼過ぎで、目的はまち並みや路地だった。「いい道だ!」とかなんとか言いながら、旧荒木小学校付近から漁港を目指して緩やかな坂道を下っていると、おそらく集落の方と思われる老婆が、道をふらふら歩いていた。歩く速度は私たちの方が早く、追い越し様に「こんにちは~」とあいさつした。すると、ひょいと顔を上げた老婆は明るく「どこから来たの。」と返答してくれた。「鹿児島からです。」と返すと、次に「夫婦ね。」との問い。「はい。」と返事すると、老婆は妻に「あんたの旦那さんは顔がスケベそうだね。」と言い放った。ふたりして爆笑しながら、その老婆と坂道の終わりで別れた。漁港まで歩いてまったりした後、今度は旧荒木小学校の方向に先ほどとは違う緩やかな坂道を上り始めた。すると、別の路地から先ほどの老婆が現れたので「お!」となっていると、「どこから来たの。」と同じ質問をされた。私も同じように「鹿児島からです。」と返すと、また「男の方はスケベそうな顔をしているね。」と言われた。それからしばらく歩く方向も一緒だったので、三人でほぼ横並びに歩いた。二度目に別れるまで老婆との会話は、「旦那さんはスケベそうな顔をしている。」に徹していた。彼女の直感は当たってなくもないが、「スケベそうな顔」を何度も何度も連呼されたのは人生で初めてであり、喜界島での貴重な経験となったのであった。

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一見どこにでもあるような鳥居に見える:東川隆太郎撮影

さて、そんな荒木集落からみて北西に位置する伊実久集落には、少々珍しい鳥居がある。集落の入口の道路沿いに位置する厳島神社は、創建年代は不明だが、平家の守護神として古くから信仰されていたと伝わる。喜界島には平家の落人伝説が数多くあり、平家の守護神が祀られていても違和感はない。御祭神は市杵島姫などで、御神体は陶器製の仏像であり、社殿には平家を表してなのか甲冑が安置されている。現在の社殿は昭和51年に改築されたものであるが、入口にあるモルタル製の鳥居は現地情報では年代不詳であった。

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社殿内の甲冑:東川隆太郎撮影

その鳥居のおかしみに私が最初に気付いたのは2018年の3月のこと。鳥居の一番上にある横柱の笠木から、二番目の横柱の貫にかけて鍾乳管が成長しているのに気が付いたのである。鍾乳管というのは、鍾乳洞の中で天井から垂れ下がり、地面から盛り上がり、太くあるいは細く連なって神秘的な景観を形成しているあれである。

喜界島は隆起サンゴ礁から構成される島であり、その隆起する速度は世界最大級とされている。また、それだけに地元産のモルタルには、大量の石灰を含んだセメントや水、砂が使用されていると考えられ、鍾乳管も形成されやすい条件にあると推測される。もちろん喜界島の鍾乳洞でさえ鍾乳管が形成されるには、気が遠くなるほどの歳月がかかるとされているが、セメントを使用したコンクリートやモルタルなどでの鍾乳管の成長は頗る早いらしい。鳥居に鍾乳管という神秘に私の胸は踊った。

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厳島神社鳥居(2018年3月):東川隆太郎撮影

ただ、その時点では鍾乳管は繋がっておらず、あと少しという状態であった。そのもう少しで繋がる状態の鍾乳管は私だけでなく、地元の役場の課長も一緒に確認していたのだが、その課長から「このたび見事鍾乳石がくっつきました(笑)」と喜びの連絡が入ったのが、2019年9月。そしてようやく私が現地で繋がる鍾乳管を確認できたのが、荒木集落で「スケベそうな顔」と連呼されたあの2019年12月のことであった。

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厳島神社の鳥居(2019年12月):東川隆太郎撮影

「つながる」ということは鍾乳管であれ、とても喜ばしいことであり、課長が気にかけておいてくださり、わざわざご丁寧に連絡くださったことにも象徴されよう。また、鍾乳洞で鍾乳管が繋がることを確認できるのは人間の生存年を考えると難しいことなので、いくぶんたやすいモルタル製の鳥居であれ、その出来事を確認できたことは貴重なんじゃないだろうか。

ということで、喜界島の鳥居ゆえの物語でもあり、これからのさらなる成長に期待を込めて世間遺産に認定した。

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厳島神社社殿:東川隆太郎撮影

 

参考文献

喜界町誌 喜界町誌編纂委員会 平成10年発行

喜界島古今物語 三井喜禎著  昭和42年発行

 

この記事はかごしま探検の会の東川隆太郎さんに寄稿いただき、カゴシマニアックス編集部で編集したものです。

かごしま探検の会ホームページはこちら

https://tankennokai.com/

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