東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol19.活きた島、口之島の山々(鹿児島郡十島村)ー




旅に出ていいんだか悪いんだか曖昧な状況が続いている。
行くことは悪くはないんだろうけど、堂々と行ってきます!とも言いにくい。
でも禁止されている訳ではないのだし…という気持ちが頭をもたげなくもないし、特に県内移動は制限もされていないからと出かけようかなと思うには思うが、離島には少し配慮も必要かなとなってしまう。
なんか難しく考えなくていい方法はないものだろうかと思うこの頃である。
さてそんな煮え切らない中、最近というか長く行けていない鹿児島の離島のことなどを地図を眺めながら思い出していた。
そんな島のひとつに口之島がある。

十島村の有人島で一番北に位置し、鹿児島港から出航したフェリーが最初に寄港する島である。
初めてこの島を訪れたのが十年ほど前のこと。
その時は島の地形の美しさにただただ驚嘆した。
しかしフェリーが島に到着するのはまだ夜が明けない時間帯だった為、集落の宿について、一息ついたころで改めて島の形状に気づいた。
朝日に照らされた急峻な凸凹な形状の山と楕円を描くような丸みを帯びた山などが重なる姿が目の前に現れ、島という限られた面積のなかにそれらが連続している様子が実に不思議に思えた。

不思議で美しい、口之島の山々:東川隆太郎撮影

口之島は北から南へ標高235メートルのフリイ岳、標高159メートルの向岳、標高628メートルの前岳、標高425メートルの燃岳、標高453メートルのタナギ岳などが並んでいる。

フリイ岳からの眺望:東川隆太郎撮影
口之島の山々:東川隆太郎撮影

このように高さがまちまちなことも複雑な地形があるように見せているともいえる。
特に燃岳は、その名前からも理解できるように活火山に指定されていて、溶岩ドームの形成は12~13世紀頃ではとされている。
また島の最高峰である前岳も昭和9年5月頃には少量の噴煙を上げていたとの報告もあり、まさに活きた島である。

前岳を望む:東川隆太郎撮影


その証拠のひとつとして島には温泉が湧出する。
集落内にも温泉施設があるが、島の南西に位置するセランマ温泉は周辺の森を眺めながら入浴できる露天風呂もある温泉である。
集落から温泉に向かうには、前岳や燃岳の裾野に設置された道路を利用することになるが、その道では全国でも珍しい野生牛に遭遇することができる。

日本で唯一温泉に登場する野生牛:東川隆太郎撮影

温泉周辺にも野生牛は登場するらしく、入浴しながら野生牛を眺めることができるのは全国でもセランマ温泉だけだろう。
島の最高峰の前岳は、南東斜面に滑落崖が発達していることから、島の東側から山を望むと特に急峻さが際立ち、自然の造形美に圧倒されてしまう。

こうした山々は島の人々の生活にとって大切な水も湛えていて、集落には「カワ」と呼ばれる湧水がある。
昭和43年に簡易水道が施設されるまでは、集落の生活用水はこの「カワ」が担っていた。
現在もここで野菜などを洗ったりしており、私も島に滞在した折には幾度となく野菜洗いの光景を目にした。

島民の生活を支えてきた、集落のカワ:東川隆太郎撮影

活火山ではあるが、現在の活動は穏やかであり、その状態も山なみの穏やかさに影響しているように思えてならない。
このように美しいのに世界自然遺産でも国立公園でもまだないということなので、とりあえず私が僕立公園として世間遺産に認定することにした。

口之島の全景:東川隆太郎撮影

参考文献
鹿児島の離島の火山 小林哲夫 著 北斗書房 2016年
トカラ列島~その自然と文化~ 斉藤毅 塚田公彦 山内秀夫編著 古今書院 1980年

この記事はかごしま探検の会の東川隆太郎さんに寄稿いただき、カゴシマニアックス編集部で編集したものです。

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