中学生の頃からずっと、洋楽を聴くわりになぜか英語と真剣に向き合ってこなかった。
もちろん成績は良くないし、英単語もあまり覚えていない。
そのため、世の中に溢れている横文字に対応できないことがけっこうある。
十数年前から耳にすることは増えていたものの、最近になってようやく意味が分かった横文字の一つが「ラボ」。
まちづくり系の団体やセンスのいいお店などが「○○ラボ」とか称していて、なんでみんな「ラボ」という言葉を語尾に付けているのかなーと本当に疑問に思っていた。
そして最近ようやく人に聞いて、「○○ラボ」のラボは、研究所の英訳である「ラボラトリー」に由来していることを知った。なるほど。
意味がわかれば尚更なんかかっこいいので、私なりに真似しようということで急遽、「鹿児島ラヴァ」、通称かごラヴァ(二文字しか短くなってない)を始めることにした。
「ラボ」ではなく「ラヴァ」。
「ラヴァ」は「ラヴァラトリー」こと「便所」であり、鹿児島の愉快な便所たちを世間遺産的にきっちり紹介していこうと決意の表れである。
ちなみに、「かごラヴァ」に関しては、世間遺産認定を始める前から興味を抱き、過去連載(vol.1記事参照)等でも数々紹介してきた。
最近もその熱意は変化することなく、鹿児島の便所の再評価を行っている。
ここで大切なのは、「愉快」がキーワードであるということ。
通常の便所に求められる清潔感や便利さや多目的といった要素は含まれず、どちらかといえば趣きがあるかや、観賞用としてどうか、さらには使用するのに遠慮の気持ちが芽生えるかが重要となる。
今回は世間遺産探訪記も連載10回を超えたということを勝手に記念し、特別編ということで過去に紹介した世間遺産的鹿児島の便所たちをいくつか再浮上させたい。
まずは、かごラヴァの中でも神社にある便所に分類される「社便」から。
2008年取材の際、鎮守の森の厳かな雰囲気の中にとけ込んでいたのは、曽於市末吉町にある住吉神社の便所。
住吉神社は、鹿児島三大流鏑馬のひとつが行われる由緒ある神社で、その社殿から少し離れた場所に便所が鎮座していた。
社殿へと延びる傾斜のある参道を上ると、右側の木々の間から見えてくる、その在り方が素晴らしかったが、さすがに年代モノであることからか、取材後に同じ場所に新しい便所が建てられた。
そういう意味では、記憶を記録する意味での認定となった。
次の社便は、2008年取材の錦江町田代川原にある若宮神社の便所。
社殿の左側の社務所らしき建物に付随している便所だが、ひとつは扉のなかにあり、おそらく女性用。
男性用は便器が建物の外にむきだしに取り付けられており、しかも使用すると、その姿が境内から丸見えとなるという微妙な位置に設置されている。
フランスの現代芸術家のマルセルデュシャンが便器のオブジェを発表したことがあったが、趣きはそれに近い。
最初の取材後に何度となく訪れているが、同じようにあるので、毎回安心感を得たくて立ち寄っている。
今度は、公民館に付随する便所こと「公便館」から。
2009年に取材した薩摩川内市中村町の獺越公民館の便所は、やはり男性用便器の位置と開放空間からの見え方が絶妙。
使用する前に、まずは見せて主張するという姿には、感動を覚えている。
ただ、最近はこちらの公民館を訪れる機会がなく、現在も主張し続けているのかが気になる。
情報求む。
最後は、駅の便所こと「駅便」から。
近年は、利用者のことを考えて駅の便所も清潔感あふれるものに建て替えられる傾向がある。
もちろん、これは大事なことなので否定するものではないが、たまにさみしくなることもある。
建て替えられる便所は、利用者の多い駅という傾向がある。
つまり逆に言えば無人駅の便所の探索には希望が持てるといえる。
指宿枕崎線の水成川駅の便所を私が世間遺産に認定したのは2010年。
開放的であり、一般道路沿いにあることから駅利用者でなくても使用できるような状況にある。
認定後には、地元の頴娃町で素敵な活動をしている「頴娃おこそ会」のメンバーが再評価してくれて、地元発信のパンフレットで紹介までしてくださった。
こうして列挙してみると、なかなか「かごラヴァ」は魅力的であり、世間遺産的にも絶滅危惧種的存在であることに気付かれるのではなかろうか。
もちろん、私は現在進行形で、便所探索を行っているので、また連載の節目節目でご紹介していきたい。
参考文献 なし
この記事はかごしま探検の会の東川隆太郎さんに寄稿いただき、カゴシマニアックス編集部で編集したものです。
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