皆さんお待たせしました。
私が勝手に認定している世間遺産のなかで、これまた勝手にジャンル化している公衆便所を、鹿児島の「便所」=ラヴァラトリー、名付けてカゴラヴァとしてご紹介する世間遺産・番外編。好評?につき第二弾。
人間の生理現象と直結する便所は、地域によっても様々で、よく観察するとユニーク。
しかも在り方に地域の人々の大らかさや懐の広さを感じてしまうから、ついつい追いかけてしまうのである…という前置きとともに県内各地の最新発見情報含めてご紹介したい。
選べることはいいことだ
まずは、鹿児島県最南端の与論島から。
与論島の中心市街地といえば茶花。
そんな飲食店やストアーや行政機関は立ち並ぶ与論島の繁華街に隣接するのが茶花港。
貨客フェリーが到着する島の玄関港は別にあるので、ここは地域の漁船が停泊する静かな港である。
その茶花港にある公衆便所はなかが風変わり。同じ個室内に和式と洋式のふたつの便器が並んでいる。
普通は壁で隔てられているふたつが同じ部屋で同居。
地域の方への聞き込みによると、「入ってからどちらでするか選択できるように」という理由で並列型になったとのこと。
鍵をかけてからの選択できるなんて珍しいが素敵だ。
類は友を呼ぶ開放感
次はさつま町柏原の便所をふたつ。
近くに点在しているふたつが揃って興味深いのだ。
ひとつは野母毛大明神の裏側にひっそりと佇むタイプ。
神社横ということであまり主張はしていないが、背後は気持ちよく眺望も開けており開放感がある。
その近くにある消防団の施設横にも便所があるが、これは屋根が微妙は作り。
作りかけなのかはがれたのか分からないが、塞がってはいるものの横骨が向きだしになっており、一見するとアート作品のようでもある。
且つ興味深いのが車通りもわりとある道路沿いに建つこの開放感。
前述の神社裏の便所の開放感はひっそりと佇んでいるので、うん、まあという感じだが、こちらの主張はすごい。
便所ここにありという堂々たる感じで頼もしいが男性は用を足すとわかってしまうタイプ。
類は友を呼ぶということか、開放感あふれるふたつだ。
公衆便所の在り方が匂う
どんどんいこう。日置市上神殿公民館の便所は、男性用便器の並び方が外からもすぐに理解できるタイプ。
便所全体の形状も古めかしいが、隣接する公民館は近代的な鉄筋コンクリート。
そのギャップがぐっとくる。
便所はこれでいいのだ的な在り方は素敵である。
凄まじい位置にある
霧島市国分郡田の河内公民館は、国分市街地から少し車を走らせただけの場所だが、一気に自然豊かな雰囲気のなかにある。
川原小学校から木原小学校に向かう道路沿いにあり、公民館の入口には道路が開通したことを記念する石碑がある。
公民館にはこうした地域の歴史を伝える記念碑はつきものなので、その坂道の先に公民館の建物があると思いきや、便所の位置がすさまじい。
記念碑と公民館の間の坂道の途中に便所が建てられ、且つ男性用便器が開放的なタイプ。
ここに置くんですかみたいな議論が巻き起こってもおかしくない場所にきちんとある。
いい。
普通ならば記念碑、公民館、便所の順番かもしれないが、二番目に便所がくる。
通行者にもわかりやすいということは素晴らしいことである。
プレロストラヴァ
最後は、曽於市大隅町月野の太田神社境内の便所。
太田神社は太田田根子命という疫病退散の神様であり、このコロナ渦においては参拝客も増えているという。
この神社の参道階段がなかなかに長いが、その入口の広場に控えめに佇むのが私の好きな便所。
階段を上り切った場所にある社殿横にも便所はあるが、背後の林に蹲るようにたたずむトタン壁が心を捉える。
地元の方によると、女性のことを考えるとおすすめできないので、近々改修しようかとの話が出ているとか。
失われるかもしれない危うさをはらみながらも、神社の御祭神が疫病退散の神の神社の境内にあるとは、行くなら今、なタイムリーな感じに思えてならない。
というわけで、今回も県内各地の愛すべき便所をご紹介したが、まだまだ私の便所行脚は継続中。県内にはある素敵な便所さんたち、私と出会うまでそのままでいてくれよ。
この記事はかごしま探検の会の東川隆太郎さんに寄稿いただき、カゴシマニアックス編集部で編集したものです。
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