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東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol12.湖畔の美しい村落・尾下集落(指宿市山川利永)ー

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なんか昔から池田湖が大好きだ。 なんで好きかといえば、まず湖としてデカいということ。 九州の池や湖で一番面積も広く、そして最深部が233メートルもある。 そんな壮大さから「イッシー」と呼ばれる巨大生物が生息しているのではとの話題もたびたび起こる湖である。 昭和53年9月3日が、イッシーと呼ばれるようになる「何か」が初めて目撃された日とされている。 その日は奇しくも私の6歳の誕生日にあたる(当時は全然知らなかった)。 ただ、それ以前から池田湖には「龍神」の話は伝わっていた。 江戸後期の地誌「三國名勝図会」には「池王明神」として登場し、「人頭龍身なる者、水渚き菰蒲の叢中に臥居たりし・・・」と、頭は人だけど体は龍という容姿を伝えている。 そういえば、鹿児島を代表するご当地ヒーロー・薩摩剣士隼人の生みの親である外山雄大氏は、キャラクターショー等の仕事に従事する以前は、「何か」を探すために池田湖に通っていたという。 当時の様子を外山氏にお伺いしたことがあるが、見た目は大人、心は少年、だけどエロスの目を併せ持つ眼差しで池田湖を凝視していた姿が容易に想像でき、話を聞いた日の夜中に思い出し笑いをしたこともあった。 最近、池田湖ともご無沙汰であるが、この文章を書きながらなんか行きたくなってきた。 やっぱり、開放的な場所はいいもんなあ。 ということで、今回は池田湖ともつながる世間遺産をご紹介。 池田湖は丸いのだが、観光施設が充実しているのは主に西側である。 その対岸に尾下集落という素敵な集落がある。江戸中期からは今和泉郷、明治22年からは今和泉村、さらに昭和23年には利永村となり、昭和30年には山川町に属した集落である。 鷲尾岳から池田湖畔への斜面地に広がっている関係から、集落に通じる道路はどうしても急斜面となる。 現在の戸数は約30戸で、公民館を中心とした場所に集中している。
東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol12.湖畔の美しい村落・尾下集落(指宿市山川利永)ー

集落の遠景:東川隆太郎撮影

公民館には尾下神社が隣接していて、赤い鳥居が目印になっている。
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尾下神社:東川隆太郎撮影

また敷地には「ジョギングコース」と記された看板が掲示されているが、これがとってもいい。 まずはイッシーと思われる「何か」が湖面に描かれ、大まかな道や山に「山の神」「水の神」「田の神」「火の神」が散りばめられている。 ジョギングコースとあるだけに、それぞれへの誘いが目的のひとつと考えられるが、実際に看板を参考に歩いてみると、「田の神」と「水の神」にしか行きつくことができなかった。 でも看板の絵柄からは地域の人々のやさしさのようなものがにじみ出ていたのでOK。
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公民館の看板:東川隆太郎撮影

さて肝心の集落だが、家並みが抜群に美しい。 地域の方々の心がけなのか、住宅周りはもちろん、道路もゴミなどが落ちておらず整然としている。
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美しい景観を保っている:東川隆太郎撮影

またきゅっと集まった家々の背後に鷲尾岳が聳えていて、その対比も絶妙である。
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集落の背後には鷲尾山がそびえる:東川隆太郎撮影

家並みから離れると池田湖はもちろん、棚田が眼前に広がってくる。
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集落の棚田:東川隆太郎撮影

その棚田の一番下には田芋田がある。田芋は熱帯性タロイモの一種で、鹿児島県では種子島以南で栽培されている。 尾下集落は、南西に開けていることから気候が温暖であり、栽培に適していたと考えられる。田芋の収穫は主として冬で、尾下集落では正月にお世話になった家に煮て届けるという「オヤカン」と呼ばれる習慣が伝わる。 また、明治時代には、尾下集落では田芋田も水田も畑も山林も集落の全戸に平等に分配するという制度があったという。 集落としての結束力の高さをうかがわせる話でもある。 他にも裏付ける史料は存在しないが、集落は平家の落人によって形成されたとの伝説もある。 周辺地域から離れていることや独特の土地分配制度から落人伝説もさもありなんと納得。
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池田湖を望む:東川隆太郎撮影

ここから眺める池田湖は、観光施設の立ち並ぶ場所から眺める池田湖とは確実に見え方が違うように思える。 不思議な「何か」も見えるのではないか…。尾下集落の風景、神々、棚田、田芋田、家並み、公民館、神社、ジョギングコースの看板など全ての要素を含めて面として世間遺産に認定した。
参考文献 山川町史 増補版 平成12年発行 山川町編集 かごしまの民俗探求 昭和52年12月発行 鹿児島民俗学会 執筆
この記事はかごしま探検の会の東川隆太郎さんに寄稿いただき、カゴシマニアックス編集部で編集したものです。 かごしま探検の会ホームページはこちら
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