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東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol8.宇検村名柄集落のハブ棒(用心棒)ー

この記事は1年以上前に書かれた記事です。 営業時間など最新の情報はお店にお問い合わせください。 変更等お気づきの場合はメニューの情報提供カテゴリーからご連絡いただけると幸いです。

近頃はステイホームも苦痛でなくなり、馴染みはしないけど普通に過ごせるようになった。

ステイホームじゃない時にあんまりやらなかったことで時間を費やすようになったことも、そんなに退屈していない理由といえる。

一つがユーチューブの視聴である。

今までも時々は拝見していたが、最近はとにかく様々な動画をチェックするようになった。

ここ二日間くらいで検索した項目を少し羅列してみたい。

「川口浩探検隊」「奄美のハブ」「左卜全」「南薩鉄道」「隕石の落下」「アンヌ隊員」「千代の富士の断髪式」「映画シベリア超特急の予告」「ハービーハンコック」「松下村塾」「ロス疑惑」「ゴダール映画」「サンフラワーの旅」

などなど。

それぞれ検索すると、それぞれに様々なタイプの動画が流れてくるので、どれもついつい連続して見てしまう。

そうこうしているうちにあっという間に夕方になるといった一日の過ごし方である。

 

余談だが(この文章自体が余談だが)、私の苦手なものに蛇がある。

史跡を訪ね歩いていると遭遇する確率の高い場所に行くことが多いのだが、困ったことに蛇が苦手である。幸いなことにおびえる割にはそんなに遭遇したことがない。

近くにいるのかもしれないけれど、ぎゃっと驚くような機会は稀だ。

それなのにユーチューブでは「ハブ」とか「川口浩隊長が発見した巨大蛇の動画」を食い入るように拝見している。

動画だから安心しているのか、これが怖いもの見たさというものなのか、苦手なら見なきゃいいのに、と自分の行動を不思議に思う今日この頃である。

 

ということで蛇にまつわる世間遺産をご紹介。

これまで、奄美大島には30回以上足を運んでいるが、やはり島での私の過ごし方のひとつは史跡めぐりや集落歩きである。

それだけに、山や藪や川べりなどにも頻繁に分け入る。

そこで注意するのは、やはりハブ。しかし本物のハブに遭遇したのは、これまでわずか2回だけだ。

しかも地元の頼もしい方々と一緒であったから、安心してハブとの距離を保つことができた。

島の方にハブのことを聞くと、住んでいても遭遇することはめったにない、という返事が多い。

注意は怠らないけど、そんなには会わないという。

とはいえ、襲われたら危険なハブとの正しい接し方がかたちになったのが、都市部ではあまり見られない、集落にはけっこう設置されている、ハブ対策のための棒である。

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol8.宇検村名柄集落のハブ棒(用心棒)ー

2015年撮影のハブ棒:東川隆太郎撮影

ハブ棒または用心棒と呼ばれるもので、長さはまちまちだが、遭遇したハブに対抗できるくらいの強度と長さを備えたつくりになっている。

距離を保ち、時には叩いて撃退するのである。

そのハブ棒が、やたらに設置されている集落が、宇検村の名柄である。

入り組んだ湾に面した名柄集落は、平成29年8月の調査では人口が121人で、宇検村では真ん中くらいの規模の集落である。

その集落を2009年に初めて訪れた際に、ハブ棒が多いなあとは感じていた。

2015年に再び訪れた際に、そのことを再認識し、さらに2017年に歩いた際に確信に変わった。

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol8.宇検村名柄集落のハブ棒(用心棒)ー

やっぱりあった、ハブ棒:東川隆太郎撮影

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol8.宇検村名柄集落のハブ棒(用心棒)ー

側溝の蓋にホールドされている状態のハブ棒:東川隆太郎撮影

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol8.宇検村名柄集落のハブ棒(用心棒)ー

電柱裏に格納されたハブ棒:東川隆太郎撮影

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol8.宇検村名柄集落のハブ棒(用心棒)ー

集団戦に対応できるよう4本並ぶハブ棒:東川隆太郎撮影

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol8.宇検村名柄集落のハブ棒(用心棒)ー

住居の敷地内からも取り出し可能、ハイブリッドハブ棒:東川隆太郎撮影

そのことを地元の役場の方に告げると、検証データがあると教えてくださった。

それは駒澤大学の須山研究室が調査した報告書(2016年1月)にあり、名柄集落のハブ棒は93本もあるという。ちなみ宇検村の他の集落と比較すると、名柄集落よりも253人と人口の多い芦検集落は34本、やはり192人と人口の多い須古集落は29本、逆に32人と人口の少ない佐念集落は32本とされている。

また報告書では、宇検村全体での集落にあるハブ棒の平均は23.6本となっており、これに照らしても名柄集落の93本はダントツの数ということになる。

ただ、人口が少ない割に佐念集落の32人に対して32本というのも見逃せない。

一人一本のマイハブ棒がある計算になる。

 

なぜ名柄集落にハブ棒を多いのか、住民に聞いてみたが明快な答えはなかった。

ただ、やたらに集落にハブが出るというわけではなく、集落には名柄小中学校があるので、生徒らの安全を考えて増えたのかもとの話はあった。

名柄集落のハブ棒の多さは、集落の人々の次世代の子ども達に対するやさしさの表れなのかもしれない。

 

ちなみにハブ棒を自分が握りしめないといけない状況にないときは、Y字路に置かれた具合だったり、無造作に横倒しになっていたりする感じなど、鑑賞バリエーションが豊富なのも魅力である。

地域の皆さんの安全をこれからも守るハブ棒であれと祈りつつ世間遺産に認定した。

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol8.宇検村名柄集落のハブ棒(用心棒)ー

Y字路に置かれ、視野を広く戦えそうなハブ棒:東川隆太郎撮影

東川隆太郎の「かごしま世間遺産探訪記」ーvol8.宇検村名柄集落のハブ棒(用心棒)ー

様々な配置がなされ、ハブ棒は地元住民の安全を守っているのである:東川隆太郎撮影

 

参考文献

「奄美大島の地域性 13」地域文化調査法野外調査報告書 2016年1月

駒澤大学文学部地理学科 須山研究室

「宇検村誌 自然・通史編」  平成29年10月 宇検村誌編纂委員会

 

 

この記事はかごしま探検の会の東川隆太郎さんに寄稿いただき、カゴシマニアックス編集部で編集したものです。

かごしま探検の会ホームページはこちら

https://tankennokai.com/

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